平成28年度下半期のNHK朝ドラべっぴんさん、ついに始まりましたね。
今回のドラマは昭和の初めのお話で、神戸の山の手のお嬢様だった坂東すみれが、戦後の何もない時代に仲間と家族に支えながら会社を創業し発展させる物語です。
この物語はアパレルメーカー「ファミリア」の創業者の一人である坂野惇子さんがモデルです。
シロクマのキャラクターで有名なファミリアは、同じくアパレルメーカーの株式会社レナウンとの結びつきがあります。
株式会社レナウンは惇子さんの父・佐々木八十八さんが創業した佐々木営業部が社名変更してできた会社です。
それ以外にもファミリア創業時には佐々木営業部が出資して株主になった経緯があり、まるで家族のような関係です。
今回はレナウンの生みの親・佐々木八十八さんやファミリアとレナウンの関係についてご紹介します。
五十八のモデル 佐々木八十八の人生
べっぴんさんの坂東五十八のモデルである佐々木八十八(ささき やそはち)さんは、1876年(明治7年)京都府京都市のべっ甲商「和泉屋」で佐々木源三郎さんの長男として生まれました。
八十八夜にうまれたので八十八と名づけられました。
佐々木家は近江源氏の流れをくむ源頼朝の側近だった鎌倉武士、佐々木高綱が先祖です。
鎌倉時代から11代続く豪商で名家でした。
- 1890年、14歳の時父が死亡して大阪の唐物問屋で働きなら浪速英学校に通います。
豪商の息子でもなんだか苦学されていますね。
- 1898年、佐々木家の家督を相続しました。
異父兄弟の兄が亡くなったから相続されたと、苦学されたのも実家が複雑だったからでしょうね。
- 1902年雲川倆子さんと婚姻されています。
べっぴんさんの母「はな」のモデルですね。
はなは物語序盤で死んでしまいますが、倆子さんは長寿で1968年86歳にて長患いすることなく亡くなっています。
その年「佐々木営業部」を設立。
27歳での起業、若手の実業家を志していました。
佐々木八十八さんは非常に商才があり、日露戦争での特需にのってメリアス業で業績を伸ばしました。
また、人を見る目もあったようで部下の尾上設蔵さん(野上正蔵のモデル)を支配人(番頭)に抜擢して、尾上さんに指揮をさせて業績を伸ばしました。
後のレナウンの商標を取得したのも尾上さんです。
- 1923年、大阪市東区区会議員となり以降は尾上さんに会社を任せました。
- 1931年から1947年まで貴族院議員を務めました。
戦争中に佐々木営業部は江商(総合商社兼松)に吸収合併され消滅し、尾上設蔵さんも死亡してしまいます。
戦後、八十八さんは息子の清さんに会社復活の夢を託します。
- 1947年、清さんはみごと佐々木営業部を復活させました。
- 1957年、昭和32年に永眠、享年83歳。
佐々木八十八さんの格言
- 因果応報(八十八さんは出入りの職人や従業員を大切にし感謝されるような人でした)
- 贅沢は文化を生むが、浪費は無駄しか生まない
商売の心得のようなものに思えますね。
娘の惇子さんには、
「自分の店にしかない特別なものを作って売りなさい」
「良い品を作り商標を大切にするように」
と言葉を残されたようです。
この辺は、まさにべっぴんさんで描かれる精神です。
商才ある父は娘に会社の進む道を説かれたのですね。
魅力ある人間の元には魅力ある人間が育つという証拠を見せられたような人間の一生でした。
株式会社レナウンの歴史
株式会社レナウンは東京都江東区に本社を置くアパレル企業で、中国の繊維会社大手、山東如意グループ(山東省)の連結子会社です。
- 1902年、佐々木八十八さんが大阪で「佐々木営業部」を設立しました。
- 1923年、イギリスのエドワード皇太子が訪日した時の御召艦が「レナウン号」で、船の名前は縁起が良いと商標登録しました。
Renownには名声・栄光という意味があります。
また、レナウン号に同行していた巡洋艦ダーバン号のダーバンも商標登録しています。
- 1936年、東西の佐々木営業部が合併し「株式会社佐々木営業部」を設立。
- 1944年、第二次世界大戦の影響により、会社消滅。
- 1947年、尾上清さん(野上潔のモデル)が「佐々木営業部」を再発足。
尾上設蔵さんの息子・尾上清さんが会社を再興されたんですね。
- 1955年、「佐々木事業部」を「レナウン商亊株式会社」に社名変更。
- 1967年、「レナウン商亊株式会社」を「株式会社レナウン」に社名変更。
1960年代にはテレビCMで「レナウン娘」「イエイエ」と弘田三枝子が歌う「ワンサカ娘」のプロモーションが話題になりCM作品賞を受賞しました。
小林亜星さんの作曲です。
- 2004年、「株式会社レナウン」と「株式会社ダーバン」が経営統合。持ち株会社「株式会社レナウンダーバンホールディングス」設立
- 2006年、「株式会社レナウンダーバンホールディングス」を受け皿とし、「株式会社レナウン」と「株式会社ダーバン」3社が新社名を「株式会社レナウン」とする。
- 2013年「山東如意科技団有限公司」と親会社の「済寧如意投資有限公司」が持つ株保有の割合が53.35%となり「株式会社レナウン」は如意グループとなりました。
戦後日本の縮図のような会社の歴史ですね。
どの時代も会社存続に命を懸けた人がいることがわかるように思います。
ファミリアとレナウン
べっぴんさんの主人公すみれのモデル坂野惇子さんはファミリアを創業されました。
ファミリアを創業するとき資金援助をしたのが佐々木営業部です。
そして佐々木営業部を実質的に経営していたのは尾上清さんです。
尾上清さんは惇子さんの会社設立の背中を押した仲間のひとりです。
「佐々木営業部」はのちの「レナウン株式会社」です。
清さんと惇子さんは、それぞれに会社を運営する実業家仲間として相談したりされたりして、2人は激動の昭和時代を走り抜けた親友です。
べっぴんさんの中では潔がすみれの先輩格として描かれていますが、実際も実業家としては清の方が先輩だったのですね。
ドラマ同様、良きアドバイザーとなったことでしょう。
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